『鴆 ―ジェン―』 文善やよひ

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ツァイホンはこの国で最も美しい鴆(ジェン)。
鴆とは毒を好んで喰らう妖鳥で、溜め込んだ毒はその羽根に美しい色を与える。
その美しさはやがて権力の象徴となり、人々はより美しい鴆と求めるようになる。
ツァイホンはその虹のような羽根で幸せな鴆になれるのか。

とにかく絵が美しい!!
品評会のツァイホンの羽根は息を飲むような美しさです。
お食事の時のツァイホンはお姫様のようにかわいいです。
食べてるの毒ですけど。
啼くツァイホンもかわいい~!
ツァイホンの足が特に好きでして、要所要所で足の動きに目を奪われてました。

ランへの想いを抱えて精一杯強がるツァイホンは純粋で、健気で、胸を打ちます。
ランにとってもツァイホンにとっても、お互いが大切な家族で、誰かと寄り添って生きていきたいというツァイホンが可愛いランの気持ちがあんな形でツァイホンに伝わるのが可愛そうで、ランとの別れはどれだけ辛かったろうと思いながら読みました。
それが、かつて自分の鴆を失ったフェイの苦しみと重なって悲しかった…

新しい飼い主の所では、毒を恐れられ、外に出るときや世話をされるときには拘束されて、誰も自分に身を投げ出さない。
ランと暮らしていたときは家の人もみんなツァイホンを大切に甘やかしてくれていたのに…
自分を憎むフェイだけが唯一人、自分に触れてくれる人で、諦めたはずだったのにやっぱり誰かに寄り添いたくてたまらないツァイホン。
ランのくれた毒を抜く苦しみに耐えてもフェイを受け入れたいというツァイホンの想いと、自分が今度こそツァイホンの望みを叶えたいというフェイの想いが交わって、大感動でした…
「おまえの作る羽根が…」とか、なんつー殺し文句!
小さい子どもみたいなツァイホンの涙の威力、すごかったです。

描き下ろしの、フェイへの愛に臆病なツァイホンと、ツァイホンに甘々デレデレなフェイが大好きでした。
ごちそうさまでした。