『ひだまりが聴こえる―幸福論―』 文乃ゆき

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ひだまりが聴こえる」の続編。

春になり太一と航平は大学2年生になった。
太一は変わらずにノートテイクを続け、航平も少しずつ周囲に馴染んでいた。
半年ほど航平が家庭教師として面倒をみていたマヤが新入生として入学してくる。
彼女も難聴を抱え、大学では航平にべったり。
太一は航平と話すきっかけを作れずに、航平との間に距離を感じるのだった。

航平が周囲に受け入れられていくほどに、太一が感じる寂しさや疎外感、絆が揺らぐような気持ち。
航平の気持ちを知ってしまったし、そこにマヤが入ってきて、太一の気持ちがなかなか定まらないのがもどかしい!
でも、ギクシャクしながらも、航平がふと寂しさを感じるときには絶妙なタイミングで太一が繋ぎとめるから、そのときの航平の気持ちを思うと胸がキュンとしました。
航平の想い方は控えめだけど、一途で揺るぎなくて、太一に正直に気を遣うところが強くて切ない。
一生懸命、太一を困らせないように頑張るんだけど、ギリギリのとこで傍にいたいっていう気持ちが痛いほど共感できて苦しかったです…
太一にもうちょっと経験値があったら!
太一に食べるのを眺める幸せそうな航平を、同じ気持ちでわたしも眺めていました。
結局どんなに遠回りしても、お互いのことを考えて考えて…っていう二人がやっぱり温かい気持ちにさせてくれるのでした。
ボケとツッコミのコンビネーションの進化も、心の安定感を与えてくれました。

マヤも位置的に、イヤな子!って思うんですけど。
彼女なりの葛藤とか苦しくてこわばった気持ちとかがあって、そういうのを解きほぐすのは太一のまっすぐで強い優しさだった。
太一は隠さなきゃと思っていたことも難なく見つけて、太一の言葉だけが違う。
強い口調だけど責めているんじゃなくて、ちゃんと真正面から相手を思いやる太一のあのニュートラルな優しさはすごい。
なんだかすごく救われた気持ちになりました。

今回も感動した場面は色々あったけれど、ほとんど航平にぐっときていたなぁ。
聴こえなくても、何を引き換えにしても太一と出会えた自分が幸せだって言う航平に泣かされました。
あの場面のあの涙にガバっと心を持っていかれました。
本当に航平にとって太一が幸せの全てなんだなぁ…

この二人のもっとちゃんと幸せに過ごしているところを見届けたい…
…と思っていたらなんと!
続編始まるそうです。(2016年10月スタート)
そちらはまたコミックスになったら書きます!