『憂鬱な朝』 日高ショーコ

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10歳で家督相続のために、それまで暮らしていた鎌倉の別邸から久世子爵家本邸へと移った久世暁人。
父の遺言はただひとつ。
「桂木に従うこと」
久世家家令・桂木は教育係として暁人に厳しく接する。
桂木に認められたい一心で暁人は彼の背中を追いかけるが    

BLというカテゴリーに収まらない、かなり骨組みがしっかりとした作品です。
時代背景やお家事情が緻密に描かれていて、複雑な人間模様の中で二人の物語は展開していきます。
様々な事情や心理が絡み合い、頭を働かせていないと置いて行かれそうになる場面もしばしば。
桂木の生い立ちはかなり複雑で、置かれた身分などもあり、心のままに身動きを取ることができない状況ですが、その中であれだけの行動範囲を確保しているのは桂木の抜きんでた才に依るところです。
暁人も成長するにしたがって生来の秀麗さが磨かれ、二人を取り巻く情勢も複雑になっていきます。
それに比例するようにお互いの心は昂っていくので、とてつもなく歯がゆい気持ちに…
しかしどんなに桂木が背を向けようとも、暁人がガッチリとロックオン。
桂木を諦めるなんてありえないという確固たる想いは、絶えず桂木に降り注いで、その心を解かしてゆきます。
あの感動的なまでの迷いのなさ、行動力。
自分を見失うことなく堂々と突き進んでいく様は、これぞご当主という感じでヤラれます。
そして傷つくときですらも真っすぐなので、鉄仮面・桂木の心を表に出せない苦しさが一層強く伝わって胸が痛い。
自分の心の扱い方や表し方が正反対だけど、お互いが想い合って苦しんでいるのは読んでいて泣けました。
お互いを幸せにしようとする気持ちがいじらしくて…!
石崎くんの至極真っ当な助言も心に刺さりました。
桂木が内面を表すようになってからは、「待て」が長かったぶん胸が熱くなるシーンが多くて大変でした…桂木の表情だけで目頭熱くしてました…

まだまだ二人とも痛々しさが抜けないので、早くドロドロに幸せな姿が見たいです。
続巻を待つ!

ドラマCDも出ています↓

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