『キングダム』 原泰久

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舞台は紀元前・春秋戦国時代、乱世の最中にある中華西方の国・秦。
ある村で下僕として生活する二人の少年がいた。
武功と立て、「大将軍」となることを夢見る信と漂は日々剣術修行に励んでいた。
ある日、漂が秦国大臣・昌文君の目に留まり、王宮へ召し抱えられることになる。
それを起点に運命の星は結ばれ、中華統一への物語が始まる。

間違いないです。
100%の自信を持って「読んでもらいたい」と言える作品です。
絵が苦手でどうも…という話は聞くものの、実際に読んでハマらなかった人の話を聞いたことがありません。
性別・年齢問わず、とにかく読んでみてほしいです。
物凄い感動と興奮がつまっていますから!!

何が1番の魅力かと問われれば、「血が通った世界」。
中華の乱世が生んだ様々な傑物が登場しますが、敵であっても敗れて散っていくのをすんなりと見送ることができない「生き様」がすごい迫力で描かれています。
敵対しても一方的な悪ではなく、どの人物にも血が通っている。
呂不韋のあの底なし沼のような人物像なんか、敵ながら善悪を超越した畏れを感じます。
敵対する人物をあんなに大きく、不思議な魅力を含んで描いているのがすごい。
そしてどの人物にも等しく生と死がある。
史実に基づいた物語なので当たり前のことではありますが、どんな偉大な英雄も始まりと終わりがあります。
「秦の怪鳥」と呼ばれ次元の違う大きなスケールで描かれた秦の大将軍・王騎。
登場人物たちにとっても、読者にとっても、まさに無敵の英雄でした。
けれど彼も血が通った人間で、彼自身の人生があり、血も流して数えきれない命を背負った大将軍でした。
王騎の存在が誰にとっても偉大過ぎて、16巻はむせび泣いて読みました。
真面目に偉大なところだけじゃなく、王騎と騰のふざけたやり取りもたまらなく好きです。
ココココ…とか、ンオフゥ…って文字を見るだけで顔がにやけてしまいます。
王騎で酒が飲めます。

あと、外せないのが合従軍戦の蕞での防衛戦。
私が一番多く読み返しているパートです。
31~33巻は涙が枯れます。
政の大王としての器の大きさに鳥肌が立って、涙も溢れて、なんだろう、あの涙は。
信たちが蕞に入ったときも、シンクロしてすごく胸が熱くなりました。
蕞の戦いは最初から最後まで息つく間もなくドラマチックで、何度読んでも同じ熱量で感動してしまいます…

他にも、蒙驁とか成蟜とか加冠の儀とか、感動ポイントを挙げたらキリがないのでこのへんにしておきます。
最後に、この作品の最大の利点というか、嬉しいところは、100巻前後で完結予定ということなので、ここまで一気読みしてもまだその倍は楽しみが続きます。(2016.9現在で43巻まで発売)