『プラネテス』 幸村誠

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人類は宇宙に進出し、その活動領域はさらに拡がっている。
自分の宇宙船を手に入れることを夢見て、デブリ(宇宙ゴミ)回収作業員として宇宙で働くハチマキ。
自由に、もっと遠くに行きたい     
宇宙の闇の中でハチマキは考える。
なぜ宇宙に来たのか、宇宙とは何だ、自分とは何者か     

ハチマキの目線で一緒に自己を見つめることができる作品。
ある期間何かに集中して取り組んだことがあれば、なおさら実感を得やすいんじゃなかろうか。

重力から逃れて、遠くへ遠くへと手を伸ばし続ける人類。
もっと遠くへ手が届いても、わかるのはまだもっと遠くがあること。
それでもなぜ手を伸ばし続けるのか。
活動域がどこまで拡がっても探す範囲が広がるだけで、人間が求める疑問や答えの本質は変わらない。

ハチマキは宇宙で働き始めて3年目、「闇」の気配に気づいてスランプを迎える。
自分の内から声が聞こえる。
何かに取り組む上で「3年目」というのは、向き合っているものの全体像が掴めてきて、自分の現在地も見える時期なんだろうと思います。
それからハチマキは修行僧のように宇宙の闇を見つめて、ピントを絞って、絞り過ぎて自分を見失ったりする道のりが、宇宙が背景にあることでとてもわかりやすかった。
足跡も残さず、なんの力に影響されることもなく独り放り出されること。
どこにいても、何者であっても、自分も全体の一部であること。
ゼロと全て、光と闇、あらゆることが背中合わせだということが、もしかしたら宇宙ではよりはっきりしているのかもしれない。
境目がないということを体感するには宇宙はもってこいの場所なのかもと思いました。

ハチマキの父・ゴローさんは親子なだけに、ハチマキと似た軌道上にいる。
そしてタナベは全く違う軌道に乗っていて、タナベとハチマキの軌道が近づいて交差するところがすごく面白かった!
宇宙で働く人たちをどーんと守っている家族がみんな素晴らしい。
特にタナベの両親にじんわり感動しました。
お父さんとても素敵でした…あの広くて柔らかな愛…
みんな遠く離れた宇宙でも誰かの愛に繋ぎとめられている。
愛が人を守るんだということは、本当にそういうところがあるんだろうと思えました。
ユーリもちゃんと奥さんに守られていて、淡泊に見えるけど結構貪欲に自分で答えをみつけようとするところがあって、物事の折り合いのつけ方は彼に最も共感を覚えました。
ユーリのように常に余裕を備えて色々考えられたらいいなと憧れます。

4巻という巻数以上に濃い内容が詰め込まれた作品でした。

アニメはこちら↓

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