『キラキラ光る嘘の粒』 カム

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水晶に映る自分にしか見えないものを信じてもらうために嘘をつかずに生きてきた占い姫。
彼女に嘘をつかせるためにやってきた、嘘つきの先生・弥次郎。

相反する生き方の二人が共に様々な嘘や真実に出会い、その先に見つけたものは     

何度も読み返して、その度に何か新しいことを見つけられる作品です。
寓話的で色んな状況に置き換えて読むことができ、素敵なヒントがたくさん散りばめられています。
経験を重ねてきた大人の人ほど、このお話からたくさんの言葉を拾うことができるのではないでしょうか。

嘘って悪いものなの?どうして?本当のことだけが正しいの?じゃあなぜ嘘をつくの?
そんな単純で、でも迷路のような疑問を占い姫は真っすぐに辿っていく。
嘘をつかずに生きてきた占い姫は、曇りのない目で真実を見ます。
だから、嘘の中にある物事をちゃんと大切に思うことができた。
物事の本質は、それが誰かにとって、世界にとってどういうものなのかということを捉えるのが大事なのだということ。
「嘘か本当か」という色付けは受け取る側によって、1つとして同じ色はないはず。
嘘も本当も色んな光が重なり合って世界を覆っているのかと思うと、世界にはまだ自分に見えていないことがたくさんあるんだろうな~と新鮮な気持ちになったのでした。
占い姫は弥次郎に出会って、一緒に世界を見て、たくさんの嘘に触れる。
知ることや考えることで「嘘」だと思っていたものが形を変える。
このお話を読んでいると、嘘とか本当とかナンセンスだよなぁって思えます。
占い姫だって、「嘘」で大切に守られている。
それは「嘘」を否定したままの占い姫だったら、きっと受け取れなかったこと。
自分と正反対の生き方をしてきた弥次郎とも違う方向を向いているようでいて、見ているものは同じだった。
自分の生き方に意味があることを見つけられた二人がかっこよかったです。
自分の気持ちや相手の気持ちを、丁寧に大切に扱いたいと思わせてくれました。

読み終えたら、なんとも自分が清らかな心の持ち主であるように感じられてなりません。
せっかくなのでそのまま疑わずに生きていこう。
全編、とてもフラットでやさしい物語でした。