『裸足めぐり』 望月花梨

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小巻と妹の小町は、最近家で不思議な気配を感じるようになった。
それは怖い感じではなく、なんだか暖かな気配。
不思議な何かは、そっとやさしく小巻や小町に手を差し伸べる。

人の心の奥のやさしさやあたたかさを感じられる物語です。
色んな場面でそれぞれの人がとる行動や態度。
その裏にある気持ちまで表に出るわけではないから、空回りしたり、「どうしてこの人はこうなんだろう?」と誤解されたり、意図しない形で伝わってしまったりする。
その行違った回路にちょっとしたきっかけをくれるのが、二人が感じる不思議な存在。
人の気持ちは想像することしかできないけど、そんな余裕もなくしてしまうほどいっぱいいっぱいの時に圧を抜いてくれる存在のおかげで素直になれた場面が、思春期の頃はたくさんあったなぁと昔の自分がかわいく思えたりしました。
思春期の頃の複雑で、全然自分の思い通りにできない自分の心が丁寧に描かれていて、リアルタイムで消化しきれなかったもやもやが、すっと心に溶け込んでゆきます。
そして大人になった今でも、この湿地のような部分が自分の心の中に残ってるんだと思います。

思春期の世界を描く切り口が、どの作品も独特で、
表題作の他に2編収録されていて、「ピュア ホワイト」は昔読んだときは祥史が苦手だなと思っていたのですが、大人になって読むとむしろ祥史に惹かれました。
BLに馴染んだからかしら…
いや、BLではないんですけど、微妙な危うい距離感みたいなのとか、自分の弱い部分の扱い方とかが、当時の私には生々しすぎたのかもしれません。
思緒と小町の男の子バージョンみたいなお話だったなぁ。
ラスト、「どう消化すればいいの、この気持ちを!」というモヤっとした感じがあったんですが、あとがきで超スッキリできました。
望月作品のあとがき、大好きなんです。

「スミレグラス」は逆に、当時はすんなり読んだけど、今は二人の大人バージョンが見たくて仕方ないです。
スミレちゃんはヒヨにゾッコンになっているのではなかろうか…
おじさんの家族計画の行方も気になるところです。