『イムリ』 三宅乱丈

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イムリ、カーマ、イコル…3つの民族が生きる世界で、この世界の、そして自分自身の謎を追い、一人「使命」を背負うデュルク。
混沌へと進む世界を、民族を救うことはできるのか     !?

この作品は全く知らず、電子書籍の神様の導き(セール)によって出会うこととなったのです。
画風が苦手な感じだったので、ジャケ買いは多分なかったはず。
なので、それでも読む機会を得られたことが本当にラッキーだったと思います。
こういう出会いがあるから電子書籍はやめられない。
しかし、正規の価格でも全く損はない、激熱のファンタジーです。

この物語の世界の仕組みを理解するまでが結構大変で、3~4巻くらいまでは必死に喰らいついていった感じです。
でも、その山を越えると、そこからはもう止まらない!
「イムリ」の世界にのめり込んでいきました。
謎、謎、謎だらけでどうすればいいんだ!というところから、1つ2つと縺れた糸を解く手がかりが手に入り、スルッと解けていく気持ちよさ。
次々に開けていく新しい世界が好奇心を刺激します。
冒険が始まって、仲間ができて、RPGの気分でページをめくっていました。
この世界や人々に愛着も湧いて、一緒に心を痛めたり、温かくなったりする場面がどんどんやってきます。

この世界で縺れている結び目は複雑で、階級や民族、支配と信じる心など、これでもかというくらいに拗れてしまっています。
「支配」で作られているこの世界では心すらコントロールしうるものであり、心ある者が消えてゆきます。
大いなる犠牲を孕んでいる世界に針を刺して穴を開けることで、世界はどう動いていくのか。
遥か昔にこの世界で起きたことの真実とは。
手探りで世界をかき分けて、手の中にある手がかりをつないでゆく極上の緊張感。
デュルクが出会うイムリたちは、まるでネイティブ・アメリカンのように鷹揚に真実をとらえた言葉をたくさん持っていて、その意味を探るシーンは大いに興奮させられます。

良くも悪くもデュルクとミューバを繋ぐ「夢」が担う役割も見どころです。
ミューバは色々と暴走して大変な人ですが、もうことごとく…哀れで…
もっと自分が若いときに読んでいたとしたら多分ミューバ大嫌いだったと思うけれど、人間らしい部分もちゃんと描かれていて憎みきれないのもまた苦しいものです…
試練に揉まれてワイルドになってゆくデュルクや、この世界の行く末から目が離せない…待ちきれない。