『男やもめも花は咲く』 ゆくえ萌葱

Pocket

家庭は崩壊、部下は使えない…仕事の忙しさに疲れるだけの毎日を力なく送る四十路の植松。
仕事帰りに立ち寄る牛丼屋で、ふと自分への気遣いに気がつく。
明るく元気いっぱいのバイトの青年・旭川との交流が生まれ、色褪せた日々が色づき始める     

器の大きな人たちの、ホッとする恋のお話です。
周りを見渡す心の余裕もなく疲弊するままに過ぎる植松の日々に、彗星の如く現れたキラキラ男子・旭川。(植松が気づいてなかっただけ)
二人の恋はとても心地よく、清いペースで進んでゆきます。

旭川はイケメンですが、まだ若く何事もストレート。
力一杯迷いながら植松のことを想います。
その眩しい旭川を、植松が大人の魅力で包んだり転がしたりするのです。
くたびれた姿しか見せていなかった植松から小出しにされる「男の顔」にクラクラと吸い寄せられてしまいます。
性別すら意識していなかった人のフイの色気って、威力がすごい!
年上感の出し方がずるいんです~~!
だんだん恋愛の感覚を取り戻して、Sの片鱗をチラつかせてくる植松…あの手のひらで転がしてニヤニヤしてる感じが………好きです…
やっぱり人はいくつになっても色気を忘れてはだめですね。

植松と旭川が二人で器がどーだ、肝っ玉がどーだと言ってますが、このお話の中で一番でっかいのは植松の娘・咲子ちゃんです。
咲子ちゃんのシーン、とてもぐっときました。
恋に悩む父・植松の姿なんて、もう衝撃的なはず。
自分以外の他人を見るお父さん、男の人であるお父さん。
お父さんが「お父さん」という生き物ではないということを知る咲子ちゃん。
うじうじと恋に悩む父親の姿を受け止め、尚且つそこから何かを学び取るという強かさ。
咲子ちゃん見てると、女ってスゴイなって思いました。

最後まで清らかで清々しい二人でしたが、私は「映画館で上映中に手を握る」というシチュエーションに自分がピンポイントで弱いということがわかりました。
手を握るのも、若者と大人じゃ何か違うものなんだな~