『NightS』 ヨネダコウ

Pocket

運び屋の唐島に仕事を依頼してきた男・穂積。
どこか秘密めいた独特の色気を感じ、唐島は穂積の仕事を受ける。
素性や本心を明かさない二人の探り合いが始まる     

裏と表が小気味よくちらついて、圧巻の展開です。
そして穂積の色気が尋常ではありません。
あの含みのある表情、無言で思索に耽る穂積…色っぺ~…
口数は最小限、だけど常にユーモアを含ませる。
ノリのいいインテリとか最強なんですけど。
悪ノリするインテリの質の悪さときたら…この人、かなり中毒性があります。
頭の回転良すぎてめっちゃ面白いんですけどこの人!
対する唐島の立場にそぐわない明るさ、仔犬ちゃんっぽさ。
ズブズブと自ら深みにハマっていく唐島とそれを面白がってあしらう穂積の関係には悲壮感は微塵もありません。
この人たち結構重苦しい立場なのに。

絡みも超色っぽくていいんです!
穂積なんか、だまって座ってるだけで溜息が出ちゃう…
常に高いところから見下ろして、決して降りてくることのないオレ様穂積様の力が遺憾なく発揮されるのが正にこのラブの場面なのです!
イニシアチブを絶対に手放さない受と、いいように転がされる攻。
最高ではありませんか。
穂積に翻弄されまくる唐島は、ずっと見ていたいほど可愛らしいです。
二人の表情とか間とか、あらゆる掛け合いがスマートで気持ちいい…
本当にナイスカップルです。

他に2編お話が入っていて、どちらも堅気の人たちのお話です。
「感情スペクトル」はなんと高校生のお話であります。
どんな人生を送ってきたのかと心配になるような色気と悟りに満ちた高校生もとても素敵でした。
バカな子も出てくるし、なんか新鮮だった。

もう一つの「リプライ」は社会人の恋のお話。
ヨネダ作品で描かれる社会人って、ちゃんと大人で、自分の立場とか理性があって、その中でのギリギリの昂りがせつなくて心にゴリゴリぶつかってきます。
かわいさも存分にあって、必死な高見さんにキュンキュンせざるをえません。仔犬か!
関さんが、もーーー!ってなってべそかくとことかもたまらん。
「三ヶ月後のリプライ」での、関さんと細川さんのやりとりでの微笑ましいのろけはニヤニヤしながら読みました。

このように、1冊最後まで大満足の内容でした。
「NightS」は電子限定で「或る夜-NightS」という二人のその後のお話が出ています。
アンコールでステージに戻ってきたミュージシャンを迎えるようときのような絶叫のテンションで読み始めましたが、非常に満足感があり、腹持ちのいい作品でありました。