『向日性のとびら』 SHOOWA

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シス・ベゲットに舞い込んだ突然の兄の訃報。
そしてその養子だというカイがシスの元にやって来る。
夜中にシスのベッドに潜り込んでくるカイにかすかな下心を覚えながらも、二人の生活はそれなりにうまくまわってゆく。
しかしその幸せにも影が迫り     !?

シスとカイの関係性に引き込まれる、ドラマチック・サスペンス・ラブストーリー。
最後まで読んだら、絶対にまた最初から読み直したくなります。
1回目はシス目線、2回目はカイ目線で読んで、一つ一つの場面に胸を締め付けられました。
カイの眼差しだけで涙がでてしまいました。
健気というか、こんな想いを抱えていたのかと思うとせつなくてたまりませんでした。
絶対最低2回は読んでしまうはず!
カイの真っ直ぐシスを見つめる表情の重みがより感じられるはず!
2回目はシスんちの扉が開いたときのカイの表情がヤバイですから。
でも、真実を知ってしまうと景色が全く違って見えて、もう戻れないので、1回目は大事に読んでほしいです。

カイはシスとの幸せな世界の中に自分の居場所ができていくことに戸惑いも覚え、しかし手放すこともできずに理性と感情の間で揺さぶられます。
シスは揺れるカイを理解できなかったりしてぐるぐる考えたりするのですが、矛盾するのはそこに感情があるから。
理性だけに従って生きていれば矛盾もなく、詰まることもない。
それを揺さぶる感情が表情や言動ですごくよく表現されています。
複雑だったものが急に単純に思えたり、そういうストンと腑に落ちたときにすごく感情に響く。
シスとカイがそういうのを前向きに体現してくれるので、じっくり堪能してほしいです。

抱える問題は重いものでしたが、みんながただ静かにそれに向き合っていくし、どうにか受け止めようと動いていくので、健全な気持ちで読むことができました。
葛藤も飲み込んで生きていく人たちがとても魅力的でした。
シスもカイも素敵だったけど、ジンの寄り添い方もすごく一途でかっこよかった。
オチのつけ方もほんとかっこよかったよ…
ジンがほんと好きだったんです!
ちょろっとしか出てこないけど、ジンと相棒のマリも相当せつない何かを抱えているはず。
ちょろっとしか出てこないのに、その奥を覗き込みたくなってしまう存在感がすごい。
すでにマリにもときめいています。
この二人はスピンオフで 『ジンと猫は呼ぶと来ない』 という作品で描かれています。

そして最後になりましたが、ラブの方もなかなかお熱いですので。
ヤケドしませんように。