『東京心中』 トウテムポール

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チャラチャラした若者・宮坂はテレビ番組の制作会社のADとして美貌のディレクター・矢野の下で働き始める。
その見かけとは裏腹の超スパルタで仕事漬けの日々に自分を見失いそうになる宮坂だったが、ふと矢野の人間らしさに触れて心がざわつき始める     !!

もっと若い頃の私だったら、個人的好みにより絵でハジいてしまっていたと思います…!恐ろしい…!
ちゃんと成熟してから出会って本当に良かった…!
今となってはもうこの絵じゃないと無理!
矢野さんと宮坂がいない世界なんてもう考えられません。

それぞれの根底にある魅力や個性がどんどん輝きを増す二人。
宮坂の誰得でもない、ドブに捨てるような素材の良さとか、いざという時のほとばしるオス度、鉄拳制裁への不屈の耐久性…
野良ネコを矢野さん(仮)と呼んで敬語で話しかけ、無償の愛で世話を焼くなんて、宮坂の人間力の為せるわざにほかなりません。
矢野さん(仮)はちっとも可愛いことなんかしてくれないんですけど、宮坂を通して見る矢野さん(仮)の不思議な愛らしさ…
そしてネコはネコ、それ以上でも以下でもなく、食卓に吸い寄せられる矢野さん(仮)を躊躇なく払いのける矢野さん(本物)…
そんな一見非情な矢野さんも、宮坂を通すと可愛くて可愛くて仕方ないという…
宮坂から全てを差し出されても、断固として必要な分しか受け取らない矢野さん。
ツンとデレの使い分けがキレッキレで、宮坂共々矢野さんの虜です…しかしクリスマス前倒しの場面は心躍った…あ~あと交際宣言も…♡

もう、宮坂あってこそなんですよ。
宮坂がいてくれて初めて矢野さんの魅力は可視化されて我々の心に届く…
器用貧乏万歳。
岩手属性万歳。
真面目万歳。
宮坂は「好き」も「仕事」も「変態」も全部真面目。
いつも真面目に頑張るから、宮坂が業界に受け入れられていくのも、矢野さんが心を開いていくのもとても嬉しくて、心がじんわりあたためられます。
しかしもちろん矢野さんにボコボコにされる宮坂にも萌えます。

この漫画はラブだけではなくて、仕事でヨレヨレになった心にも染みてきます。
宮坂たちが夢中で働くテレビ業界も、心も体も凄まじく大変な世界だということが伝わってきます。
息を切らして働きながら、恋にも悩んで苦しい思いをしたり、好きで好きでいてもたってもいられなかったり。
自分がどんな状態でも、毎日ちゃんと仕事を繋げていかないといけない。
宮坂がフラつきながらもテキパキと仕事をこなしていく姿とか、投げ出さずに真面目に取り組む根性に私は胸が熱くなりました。
投げやりにならない、思考停止しないということは苦しくても自分の血肉になっていくんだよな~と初心を思い出せたような気がします。
宮坂が仕事の先輩だったらいいよな~。
きっとずっと自分のお手本にすると思う。

…と、仕事的には大真面目で尊敬してますが、やっぱり一番の見どころはバカ担当の宮坂だと思います。
長~い物思いに耽る宮坂とか、矢野さんのことになると途端に冷静さを失う宮坂とか、砕かれても砕かれてもめげない宮坂とかの動きや表情はとびきりのご馳走です。
だんだん、ほだされる率が上がってきた矢野さんですが、宮坂をバカにしてくれるのは矢野さんしかいません。
これからも末永く容赦なく冷めた瞳で宮坂を見つめていてほしいです。