『私の少年』 高野ひと深

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それなりの面倒臭さを抱えながらも、単調な毎日を送る30歳の聡子は、ある日家の近所の公園でサッカーの練習をしている美しい少年・真修と出会う。
聡子は真修にサッカーを教えることになり、二人の交流が始まる。
親子程も年が離れた二人だが、関わりが深まっていくほどにお互いを大切に想う気持ちも深まってゆく。
孤独と心を分け合う二人の物語     

30歳の聡子が幼いわけではなく、12歳の真修が大人びているわけでもない。
大人なりの悩みがあり、子どもなりの悩みがある。
でも二人は同じ重さで、真剣さで相手のことを大切に想っているという不思議なバランスがごく自然に描かれていて、二人の年齢差は全く気になりませんでした。
二人のお互いへの想いはなんて呼んだらいいんだろう。
とても綺麗であたたかい感情なんだけど、「他人」として大人と子どもが一緒にいるということはきっとこれからたくさんの困難があるだろうな…と思うとため息が出てしまいます…

男女の機微というか、だれもが心の隅の隅にこっそり持っている、息が苦しくなるような感情もよく描かれています。
大人同士の間にモヤモヤと漂う感情なのに、真修も全然置いて行かれてないのがすごい。
真修と聡子は理解しあえる部分があるから、お互い丁寧に丁寧に距離を測る。
手が届かない部分が見えても卑屈にならないのが本当にあっぱれです。
それも相手にとって大切なものだと思えて大切にする二人が美しくて…
なので、今のところ椎川さんにキーッってなってます。
きっと彼にも彼なりの何かがあるんでしょうけれども。
わたしは真修がかわいいので。
あの顔で「俺」っていう真修がたまらん。
何度か真修の天使のような純粋さに焼かれて死にそうになりました。
真修が笑ってくれるだけでわたし幸せです…
聡子も潔くてすごくかっこいいです。
椎川さん、頼むからその二人の邪魔にならないでいただきたいのです。
学校で同級生のお友達の中にいる真修がかっこよすぎるのも罪…
あんなキラキラしてたら小娘たちに見つかってしまう!
どうか聡子が「ババァ」とか言われて小娘たちにいじめられませんように…
真修に気付いて視野が開けてゆく菜緒ちゃん(12)よ…どうか素直でお人よしのままで…

目を逸らすことができなくて、一緒にいると幸せで…って、こんな美しい関係の二人に肩入れせずにはいられません。
序盤から吸い込まれるように二人を好きになってしまいました。
これから真修はどんどん大人になって、男の人になって…その境界に遭遇したとき聡子はどうするのか。
出会ったときから大人だった聡子の前に大人として立ったとき、真修はどんな想いを抱いてるんだろう。
二人が幸せに笑う時間がたくさんありますように!