『町でうわさの天狗の子』 岩本ナオ

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天狗の父と人間の母との間に生まれた秋姫は、ちょっと大食いで力持ちだけど、素敵な恋に憧れる優しい女の子。
天狗になるための修行中の幼なじみ・瞬ちゃんやお山の仲間たちに囲まれて、恋に友情に青春を邁進中!

まさかの壮大さ。
始まりから全員ふざけっぱなしだし、アハハ~ってすごい気楽に読み始めたのに。
世界観めっちゃユルいのに。
クライマックスは3時間くらい嗚咽しました。
そして泣きつかれて眠り、起きたら目が腫れていました。

めちゃくちゃ笑わされて、めちゃくちゃ泣かされる作品です。
こんなに愛が溢れる世界を描けるなんて本当にものすごいことだと思う。
読んでるといつも、周りの人に見守られて遊んでいた子どもの頃みたいな、なんだかすごく愛されている気持ちになるんです。
もう何もかもが幸せって、なぜか思う。
ユーモアって愛だなって思う。
あ~もう読んで欲しい!
緑ちゃんの毒とか瞬ちゃんのツンにやられて欲しい!

岩本作品の愛すべきところは、「モブがいない」ということ。
全員の存在感がすごい。
みんなそれぞれの舞台でスポットを浴びているというか。
隅から隅まで愛さずにはいられません。

あと、あの悪ノリ。たまんない。
どんなときもふざけてるし、だいたいみんな一言多い。
康徳様をはじめ、眷属の獣たちとか神様たちも…全員B型か!(イメージです…)
人間も神様もみーんな、すっごいくだらないこと言ったりしたりしてて素晴らしいんですよ…!
福山様もたまに飛ばしてくるのがヤバかったな。
お山のみんなはいつもお互い小言ばっかり言ってるのに、結局秋姫と瞬ちゃんのことが大好きとかキュン死にさす気か。
その部門ではやっぱ三郎坊が抜群にキュンキュンさせてきます。
普段適当な奴が不意に見せてくる本音って、わたし、陥落率100%。
三郎坊の距離の詰め方ヤバい。
手つないで欲しい。

瞬ちゃんも2%のデレがすごい効いてました。
瞬ちゃんのはキュンっていうより「愛…愛だよね…」ってなんか込み上げてくる…
康徳様だって、普段は秋姫と春菜ちゃんにゴマすりまくってるのに、いざとなったときの父感すごかった。
体を張って娘を守ろうとする父の姿。

武くんは芸術家としての感動があったもんな。
瞬との友情とか、男の子として成長していく様子がとても清々しかった。
これからどしっとイイ男になっていくだろうから、大人になってからの様子が見たいな~
もっとずっと、みんなのその後を追っかけたい…

笑い、涙、キュン、愛…すべてが詰まった、ものすごい振れ幅の物語です。
何度も読み返したい。
どの年齢でも心に響くと思います。
アニメで映画化してくれないかな~クライマックスとか本当にすごい流れになると思うんだけど。