『87CLOCKERS』 二ノ宮知子

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名門音大に通う一ノ瀬 奏は闘争心が無く、ガツガツした雰囲気に馴染めない草食男子。
ある日、通学の途中で雪が降る寒さの中に裸足で佇む美少女・ハナに遭遇し、心を奪われる。
彼女に認められようと、”PCのF1レース”と言われる「オーバークロック」という未知の世界に足を踏み入れる!

安定の二ノ宮クオリティです。
作者買いで間違いないです。
今作でも非常に魅力的なオレ様が大活躍!
MIKE様…あの性格の悪さ…いつもながら上質なS感、ゾクゾクしました。

この作品は「オーバークロック」という電脳世界に溺れる人たちのお話なのですが、私は全く知らない世界でした。
そして別にこのマンガで盛り上がって気軽に「私も!」と飛び込める類の世界ではなく、むしろ敷居が超高い!入口の超狭い!
そんなかなりマニアックな世界にすごい勢いで引きずり込む吸引力がすごい。
キャラの濃さは文句のつけようがなく、脇の脇の隅から隅まで個性的でブッ飛んだ人たちが暴れ回ります。
そんな世界にヒューマンドラマがブチ込む手腕…
コメディ、ドラマ、マニアック…どの角度から読んでも面白い!
オーバークロック界でもそれぞれ美学やこだわりを持っていて、もう「冷却哲学」っていう分野で戦争になりそうなくらい(実際ゲームで激しく戦いますが)、みんな熱々に沸騰しています。
外野からツッコミを入れながらゲームを見る興奮…高揚感…誰もが多少なりとも共感できるあの自分を棚上げした盛り上がりを、すごい臨場感で体験できます。
ゲームの進め方に如実に表れる人間性が面白くて、ヒーヒー言いながら読みました。
主人公の衛生兵・奏は音大生で、そこがまた絡んでくるのも面白かった!
最初はヤル気なくてグダグダの草食系だった奏が、オーバークロックの世界に入ってからどんどんたくましく図太くなっていくのもよかったし、それでも色々振り回され続けるのもよかった。
そして舞台もどんどん大きくなっていく!
私はゲームをプレイしているMIKE様の大ファンです。
いちいち奇跡すぎて笑い死にしてしまう。

存在すら知らなかった世界が、自分の知らないところで今もフル回転しているのかと思うと興奮するし、自分は他にもどれだけの面白い世界を知らずにいるんだろうとソワソワしてきます。
二ノ宮知子という人を通すと何でも面白くなってしまうのがすごい。