『ひだまりが聴こえる』 文乃ゆき

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まっすぐな性格のために周囲と衝突しがちな太一。
トラブル続きでバイト探しがうまくいかず落ち込んでいたとき、一人で昼ご飯を食べていた同じ大学の航平と出会う。
航平は難聴を抱え、周囲と距離を置くように過ごしていた。
出会いをきっかけに、太一は航平の「ノートテイカー」を務めることになる。

これはBL読んだことない人や、苦手意識がある人にも是非読んでもらいたい作品です!
ラブは控えめだし、何よりたくさんのことを感じられる物語です。
ちょっと暗めのお話なのかな?というイメージがあったのですが、全体的に明るく温かい雰囲気で、太一も航平も本当にいい子たちなんです!
性格や背負っているものは違うけど、二人とも自分の人生を精一杯生きていて、傷ついても投げず、捨てず、立ち上がる強さ。
周囲の些細な言動や出来事に感じる思いも丁寧に描かれていて、そこに彼らそれぞれのこれまでの道のりを見ることができます。
二人の心の機微を存分に味わってほしいです。

太一は人を通して自分も傷ついて、生きるの大変だろうなぁと思います。
トラブルにつながることが多かった太一のまっすぐな思いやり。
それが航平の心の奥にしまい込んだ寂しさに届いて、自分自身も自分の人生も肯定することができたときのあの光が差し込むような感情はもう胸がいっぱいになりました。

「なんでお前の方が遠慮してんだよ。聴こえないのはお前のせいじゃないだろ!」

文字だけだと道徳的な当たり前のセリフなのに、こう言った太一の気持ちも言われた航平の気持ちもすごく強烈でした。
押し殺してた部分をあんなふうに拾われたら、そりゃあ涙でちゃうでしょう…!!
ハンバーグのエピソードだって、それだけだと珍しくもなんともない話だけど、太一だから、航平だから伝わってくるものがあったんだと思います。

航平の自信のなさも卑屈って感じではなくて、寂しさの果てみたいな純粋さがあって、なんというか…愛おしかったです。
航平が無視して太一が追っかけてきたときも、嬉しくて涙があふれてきてしまいました。
基本的にふたりとも素直だから、わかりあえたり幸せになってくれると、読んでいて幸福感ハンパないです。

そしてなんとこちらの作品は映画化が決定しています。
現時点でまだ詳しい情報がないので、これから要チェックです。
続編で「ひだまりが聴こえる―幸福論―」というコミックスが出ているので、そちらでもまた!

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