『モアザンワーズ』 絵津鼓

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自分の存在に自信も意義も見いだせない美枝子。
周りの子供っぽく感じる他の同級生とは違い、どこか落ち着いている妹尾(マッキー)と仲良くなる。
高校に上がって一緒に入ったバイト先で大学生の永慈と仲良くなり、3人でつるむようになるが、永慈が妹尾を気にしはじめて     !?

誰かに、何かの役割を強く求めては失望する、青春の不確かさや不安定さにもがく若者たち。
自分はこの世界の誰かにとってどんな役割があるのだろう、何を与えられるのだろうという思いをみんなが持っていて、大切なものを必死に守ろうとする。
けれど、なかなか望む通りの現実はやってこない。
誰のせいでもないんだけど、みんな苦しい思いを抱えたり、傷ついてしまって、自分自身と世界のバランスが取れなくて生きにくかった感じを思い出しました。

両親の離婚で、自分は父を繋ぎとめられる存在ではなかったのだと、無力さを胸に抱えてきた美枝子。
マッキーと出会って、父親の役割を無意識に求めてしまうけど、女の子って少なからずそういうところがあるんじゃないかなぁ…
マッキーにだけじゃなくて、永慈に対してもそれはあったんじゃないかと思うし、二人は美枝子のそんな渇きを潤すような存在だったから、今度こそ自分がなんとしても繋ぎとめたいという美枝子の気持ちが心をヒリヒリさせました。
突飛で滅茶苦茶だったけど、必死の策で、それくらいマッキーと永慈は美枝子にとって大切な「幸せ」体現する存在だった。
みんなが誰かのために心を砕いているのに、全部うまくいく正解なんてなくて、掛け違っていく心がせつなかった。

色んな気持ちが理解できてしまうから、マッキーも永慈も落としどころが見つからなくて、特にマッキーは…うん…難しいよなぁ…
そもそもマッキーは誰かに何かの役割を求めるようなことが薄かったように思います。
それは永慈もだけど、永慈はちゃんと大人になる時間があったから。
いろんな感情とか葛藤とかを自分の中でこねくり回して、そうやって自分で肯定してきたから。
マッキーは自分の基盤を肯定することができない状況で、それでも等しく時間は過ぎるし、その流れに変化を強いられるのがかわいそうだった。
永慈パパの頑なさはショックでした…マッキー偉かったよ。
なんと難しい青春…

ここから数年後のマッキーのお話で 『IN THE APARTMENT』 という作品が先に出版されているけれど、わたしはこの 『モアザンワーズ』 を先に読みました。
そしてそれは大正解だったと思っています。
3人のお話を過去として読むよりも、こういう道を歩んできたマッキーの物語として追うことができたので、この順番で良かったなと思います。
さらに続編も進んでいるし、マッキーがなかなかこじらせ男子なので、アサトくんが苦労しているようです。(続編『続 IN THE APARTMENT』出ました!マッキーの幸せを見届けてください!!泣)
ちなみに 『SUPER NATURAL』 という作品にアサトくん・榊さん・美枝子(姿は出てこないはず)がひかえめに登場します。
高校卒業後の専門学校でのお話。
『モアザンワーズ』 以外はBL作品です。

時系列は、
『モアザンワーズ』

『SUPER NATURAL』

『IN THE APARTMENT』

『続 IN THE APARTMENT』

どれも面白かったです!!

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